SBI新生銀行(8303)12/17上場

IPO企業分析

総合評価ランク

B
★★★☆☆
幹事構成
野村證券主幹事
SBI証券主幹事
みずほ証券主幹事
ゴールドマン・サックス証券主幹事
SMBC日興証券主幹事
BofA証券主幹事
大和証券主幹事
岡三証券
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
松井証券
岩井コスモ証券
極東証券
Jトラストグローバル証券
東洋証券
水戸証券
むさし証券
仮条件
1,440〜1,450円
想定時価総額
約1.29兆円
BB期間
12/2(火) 〜 12/5(金)
上場市場
東証プライム
上場日
12/17(水)
一口メモ
本案件は、2023年に上場廃止→2025年7月に公的資金を完済→2025年12月に再上場、という極めて異例の経緯をたどっています。時価総額1.29兆円、吸収金額3,676億円という国内IPO史上最大級の超大型案件です。ただ、初値と言う意味ではやや重くなると想定し、評価Bとしました。

利益構造

銀行ビジネスの本質:「預金と貸出の利ざや」だけではない

多くの人は銀行の収益を「預金を集めて、それを貸し出して金利差で稼ぐ」とイメージします。これは半分正解で、半分不正解です。

SBI新生銀行の2025年3月期の収益構造を見てみましょう:

  • 経常収益: 614.0億円
  • 内訳:
    • 資金運用収益(貸出・有価証券運用): 311.0億円(50.6%)
    • 役務取引等収益(手数料ビジネス): 32.7億円(5.3%)
    • その他業務収益・特定取引収益等: 270.3億円(44.1%)

興味深いのは、「その他」が44%も占めている点です。これは何を意味するのでしょうか?

「銀行とノンバンクの機能を併せ持つ」の意味

SBI新生銀行は、単なる預金・貸出銀行ではありません。届出書には「銀行とノンバンクの機能を併せ持つ総合金融サービス」と明記されています。

具体的には以下の4つの事業セグメントで構成されています:

  1. 機関投資家事業(法人向け貸出・ストラクチャードファイナンス)
  2. 個人事業(住宅ローン・カードローン・資産運用)
  3. 新生フィナンシャル(個人向け無担保ローン)
  4. 海外事業/証券投資/その他

このうち、機関投資家事業新生フィナンシャルが大きな利益を生んでいます。

ストック型収益の本質:ローン残高の積み上げ

銀行ビジネスの強力な点は、「一度貸し出せば、返済されるまで毎月利息が入り続ける」ストック型収益構造です。

例えば:

  • 住宅ローンを1件実行すれば、30年間にわたって金利収入が発生
  • カードローンの契約が積み上がれば、毎月の利息収入が自動的に増加
  • 法人向け貸出も同様に、貸出残高が増えれば資金利益が積み上がる

SBI新生銀行の主要KPI:

  • 貸出金残高: 約6.8兆円(2025年9月末時点)
  • 預金残高: 約9.6兆円(2025年9月末時点)
  • 総資産: 約16.1兆円

これらの残高が「基盤」となり、そこから生まれる利息収入が安定的なキャッシュフローを生み出します。

SBIグループとの協業がもたらす「流通チャネル」

SBI新生銀行の最大の強みは、SBIグループのエコシステムに組み込まれている点です。

具体的には:

  1. SBI証券との口座連携

    • SBIハイパー預金(証券担保ローン付き預金)は残高4,000億円を突破
    • 証券取引をする顧客が自動的に銀行口座も開設→相互送客
  2. デジタル優先戦略

    • スマホアプリ「パワーダイレクト」で24時間365日対応
    • ステップアッププログラム(優遇制度)で顧客をロックイン
  3. 年齢別特典

    • U28Zero(28歳以下)、Bright 60(60歳以上)など、ライフステージに応じたサービス

この「流通チャネル」は、SBI新生銀行が単独で構築しようとすれば莫大なコストがかかります。しかし、SBIグループの顧客基盤を活用することで、低コストで顧客を獲得できるのです。

これは銀行業において極めて有利な競争優位性です。

なぜ利益が継続的に増えているのか

2023年3月期→2024年3月期→2025年3月期と、経常利益は右肩上がりです:

  • 2023年3月期:経常利益 約378億円
  • 2024年3月期:経常利益 約611億円(+61.6%)
  • 2025年3月期:経常利益 約778億円(+27.3%)

この成長の背景には:

  1. 金利上昇環境の恩恵

    • 日銀の金融政策正常化により、貸出金利が上昇
    • 預金金利の上昇ペースは緩やか→金利マージンが拡大
  2. 貸出残高の増加

    • 不動産ノンリコースローン、コーポレートファイナンスが好調
  3. 手数料ビジネスの拡大

    • 資産運用関連手数料が堅調

つまり、「ローン残高が積み上がる」×「金利環境が改善」という2つのドライバーが働いているのです。


業績を示すファクトデータ

貸出金残高の推移

  • 2023年3月期:6.3兆円
  • 2024年3月期:6.6兆円
  • 2025年3月期:6.8兆円
  • →毎年2-3%ずつ堅実に増加(これが利益の基盤)

預金残高の推移

  • 2023年3月期:9.1兆円
  • 2024年3月期:9.4兆円
  • 2025年3月期:9.6兆円
  • →安定的な資金調達基盤

預金が積み上がるほど、低コストで資金を調達でき、それを高い金利で貸し出せます。

SBIハイパー預金の急成長

  • 2024年3月期:残高データなし
  • 2025年:4,000億円突破を発表
  • →SBI証券連携による独自商品が急拡大中

これは、SBIグループのエコシステム効果が実際に働いている証拠です。

不良債権比率

銀行の健全性を示す重要指標:

  • 不良債権比率: 1%前半(届出書に明記なし、推定)
  • 貸倒引当金: 適切に積み立て
  • 自己資本比率: 10%以上(バーゼルⅢ基準を十分満たす)

→ 財務健全性は高い水準

公的資金の完済

  • 2025年7月に公的資金1,200億円を完済
  • →「国のお荷物」から脱却、民間金融機関として再出発

これは極めて重要なマイルストーンです。公的資金を完済したということは、「自力で利益を生み出し、資本を蓄積できる体制が整った」ことを意味します。


業績予想と成長見通し

業績実績と予想(単位:億円)

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期(予想)
経常収益 530.7 614.0 非公表
経常利益 610.7 777.8 非公表
当期純利益 579 844 1,000

数字の意味

  • 2025年3月期の当期純利益844億円は過去最高益 → これは金利上昇環境と貸出残高増加の両方が効いている証拠

  • 2026年3月期の当期純利益予想は1,000億円(前期比+18.3%) → 経営陣は二桁成長を継続できると見ている

  • 中間期(2025年4-9月)実績は693億円 → 通期1,000億円達成は射程圏内

成長率の水準評価

当期純利益の前年比成長率:

  • 2024年3月期 → 2025年3月期:+45.8%
  • 2025年3月期 → 2026年3月期(予想):+18.3%

銀行業で二桁成長を続けるのは異例です。通常、大手銀行の成長率は一桁台です。

予想達成の蓋然性

達成の根拠:

  1. 金利上昇トレンドの継続

    • 日銀の金融正常化政策は当面続く見込み
    • 貸出金利は引き続き上昇余地あり
  2. SBIグループとのシナジー加速

    • SBIハイパー預金はまだ初期段階、拡大余地大
    • SBI証券の顧客基盤(800万口座超)を活用
  3. コスト構造の改善

    • デジタル化による業務効率化
    • 公的資金返済により資本コストが低下

リスク要因:

  1. 景気後退による貸倒れ増加

    • 不動産市況悪化→ノンリコースローンの焦げ付き
  2. 金利急上昇による逆ザヤ

    • 預金金利が貸出金利より速く上昇すれば利ざやが縮小

ただし、経営陣は保守的に見積もっている印象です。中間期の進捗から見て、通期1,000億円は達成確度80%以上と推定されます。


業績を支える因果関係

外部要因:日銀の金融政策正常化

最大の追い風は、日銀のマイナス金利解除です。

2024年3月にマイナス金利政策が解除され、2024年7月には0.25%への利上げが実施されました。これにより:

  • 貸出金利が上昇 → 利息収入増加
  • 預金金利の上昇は緩やか → 利ざやが拡大

銀行業は「金利差ビジネス」です。貸出金利と預金金利の差(スプレッド)が広がれば、自動的に利益が増えます。

SBI新生銀行は、このマクロ環境の変化を最大限享受しています。

内部要因:SBIグループのエコシステム

単独の銀行では、顧客獲得コストが膨大です。しかし、SBI新生銀行は:

  1. SBI証券との口座連携

    • 証券口座開設者に銀行口座も同時開設を促す
    • SBIハイパー預金は証券担保ローン機能付き→投資家に魅力的
  2. SBIグループの信用力

    • 「SBI」ブランドによる信頼感
    • グループ全体での顧客基盤(1,000万人超)
  3. デジタルファースト戦略

    • 店舗コストを抑えつつ、アプリで利便性を提供
    • ステップアッププログラムで顧客をロイヤル化

これらは、親会社SBIホールディングスが作り上げたエコシステムに「ただ乗り」できるという強烈な優位性です。

構造的優位:ノンリコースローンの専門性

SBI新生銀行の強みの一つは、不動産ノンリコースローン(不動産のキャッシュフローのみを返済原資とする融資)です。

通常の銀行は、企業の信用力全体を見て融資します。しかし、ノンリコースローンは不動産そのものの収益力を評価して融資します。

これは高度な不動産評価ノウハウが必要であり、新規参入者にはハードルが高いビジネスです。SBI新生銀行は長年この分野で実績を積んでおり、専門性による参入障壁があります。


競合構造(同業 × 代替)

同業競合:メガバンク vs 地銀 vs ネット銀行

銀行業界は大きく以下に分類されます:

  1. メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)

    • 圧倒的な資本力と顧客基盤
    • 国際業務、大企業向け融資が中心
    • 収益構造:総合金融、グローバル展開
  2. 地方銀行

    • 地域密着型、中小企業向け融資
    • 人口減少・低金利で苦戦
    • 収益構造:地域経済依存、利ざや縮小
  3. ネット銀行(楽天銀行、住信SBIネット銀行など)

    • 店舗なし、デジタル完結
    • 低コスト構造
    • 収益構造:手数料・カードローン

SBI新生銀行はどこに位置するのか?

答え:「メガバンクとネット銀行の中間」

  • 店舗は最小限(メガバンクより軽い)
  • デジタル重視(ネット銀行並み)
  • 法人向け専門金融(メガバンク的)
  • 個人向けカードローン(ネット銀行的)

この「いいとこ取り」ポジションが、SBI新生銀行の独自性です。

代替:フィンテック企業の台頭

銀行の競合は、もはや銀行だけではありません:

  • 決済:PayPay、楽天ペイ(銀行口座不要)
  • 融資:クラウドファンディング、ピアツーピア貸出
  • 資産運用:ロボアドバイザー、仮想通貨取引所

しかし、SBI新生銀行はSBIグループの一員であることで、この脅威を逆に強みに変えています。

例:

  • SBIグループは仮想通貨取引所(SBI VCトレード)も運営
  • ロボアドバイザー(WealthNavi)とも連携

「フィンテックを取り込む側」に回ることで、代替リスクを回避しています。

結論:条件分岐で評価が変わる

SBI新生銀行への投資判断は、以下の条件で変わります:

条件A:SBIグループのエコシステムが拡大し続ける → ポジティブ(顧客獲得コスト低減、相互送客が加速)

条件B:金利上昇トレンドが続く → ポジティブ(利ざや拡大、利益成長継続)

条件C:景気後退で不良債権が急増 → ネガティブ(貸倒損失増加、利益圧迫)

条件D:フィンテック規制が厳格化 → ネガティブ(SBIグループ全体への逆風)

現時点では条件A・Bが優勢です。ただし、条件Cは景気次第であり、予測困難です。


IPO需給構造

公募・売出・OAの内訳

  • 公募(新株発行): 55,500,000株
  • 公募(自己株処分): 33,500,000株
  • 売出(SBIホールディングス): 133,000,000株
  • OA(オーバーアロットメント): 33,300,000株

合計: 約255,300,000株

吸収金額

仮条件中央値1,445円として:

  • 総吸収金額: 約3,689億円

これは国内IPO史上最大級です。

浮動株と需給バランス

  • 上場時発行済株式総数: 895,500,000株
  • 公募・売出の合計: 222,000,000株(OA除く)
  • 公募・売出比率: 約24.8%

つまり、発行済株式の約4分の1が市場に放出されます。

ロックアップ

  • 大株主(SBIホールディングス): 180日間のロックアップが設定

ロックアップ解除時に追加売却される可能性があり、その際は需給悪化リスクがあります。

親引け先:農林中央金庫

届出書には、農林中央金庫に対して最大3,472,200株(約50億円)を親引け(優先割当)することが記載されています。

これは、農林中央金庫とSBI新生銀行の業務提携関係を構築するためと説明されています。

親引けは、安定株主を確保するという意味でポジティブですが、一般投資家への配分が減るという意味でネガティブでもあります。

短期の需給バランスに及ぼす意味

超大型案件であるため、以下の需給懸念があります:

  1. 吸収金額3,689億円

    • 東証プライム市場の1日の売買代金は約3兆円
    • 吸収率は約12%
    • 市場の吸収力からすれば「重い」レベル
  2. 公募・売出比率24.8%

    • 発行済株式の4分の1が一気に市場に出る
    • 初値形成後、売り圧力が続く可能性
  3. SBIホールディングスの持株比率低下

    • 今回の売出後も過半数を保有すると想定されるが、将来的な追加売却懸念
  4. 機関投資家の需要

    • プライム市場案件なので、機関投資家の買いが入る
    • 時価総額1.2兆円は大型株ファンドの組入れ対象

結論:短期的には需給が重く、初値は公募価格を下回るリスクがあります。ただし、中長期的には機関投資家の買いが入り、安定する可能性があります。


仮条件レンジ分析

仮条件:1,440円~1,450円

想定価格: 1,440円 仮条件レンジ: わずか10円幅(0.7%)

この狭いレンジは、主幹事が価格をほぼ確定させていることを意味します。

PER計算

2026年3月期予想当期純利益: 1,000億円
発行済株式数(上場時): 895,500,000株
EPS: 1,000億円 ÷ 8.955億株 = 111.7円

仮条件ベースのPER

  • 下限1,440円:PER 12.9倍
  • 上限1,450円:PER 13.0倍

類似銀行との比較

主要銀行のPER(2025年12月1日時点、概算):

  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ: PER 10-11倍
  • 三井住友フィナンシャルグループ: PER 9-10倍
  • みずほフィナンシャルグループ: PER 8-9倍

SBI新生銀行のPER 13倍は、メガバンクより高い

これは以下を織り込んでいると推定されます:

  1. 成長性の高さ(二桁成長 vs メガバンクの一桁成長)
  2. SBIグループのシナジー
  3. 公的資金完済による「再生ストーリー」

PBR計算

2025年3月期末の純資産: 約8,860億円(届出書より) 発行済株式数(上場時): 895,500,000株 BPS: 8,860億円 ÷ 8.955億株 = 989円

仮条件ベースのPBR

  • 下限1,440円:PBR 1.46倍
  • 上限1,450円:PBR 1.47倍

メガバンクのPBR:0.6-0.8倍程度

SBI新生銀行のPBR 1.46倍は、メガバンクの約2倍

これは、ROE(自己資本利益率)の高さを反映しています:

  • SBI新生銀行のROE: 844億円 ÷ 8,860億円 = 9.5%
  • メガバンクのROE: 5-7%程度

ROEが高い企業は、PBRも高く評価される傾向があります。

配当利回り

2026年3月期予想配当: 34円(届出書より)

仮条件ベースの配当利回り

  • 下限1,440円:2.36%
  • 上限1,450円:2.34%

メガバンクの配当利回り: 3-4%程度

SBI新生銀行の配当利回りは、メガバンクより低い

これは、成長企業として配当より内部留保を優先する方針と推定されます。

主幹事の仮条件設定スタンス

野村證券・SBI証券が設定した仮条件は、「やや強気」と評価できます。

根拠:

  1. PER 13倍はメガバンク(PER 8-11倍)より高い
  2. PBR 1.46倍もメガバンク(PBR 0.6-0.8倍)の2倍
  3. 配当利回り2.3%は低め

この価格は、「成長性とSBIグループのシナジーを織り込んだプレミアム価格」です。

裏を返せば、初値で大きく上昇する余地は少ないとも言えます。


条件付きレンジ

以下は予想ではなく、「条件が成立した場合の計算上の到達領域」です。

前提条件マトリクス

シナリオ EPS成長率(年率) 想定PER 3年後のEPS 3年後の理論株価
強気 +15% 15倍 170円 2,550円
基本 +10% 13倍 149円 1,937円
弱気 +5% 11倍 129円 1,419円

計算根拠

  • 強気シナリオ: 金利上昇継続+SBIエコシステム加速
  • 基本シナリオ: 現状の成長率維持
  • 弱気シナリオ: 景気後退で成長鈍化

各シナリオの前提

強気シナリオ(確率20%)

  • SBIグループとのシナジーが想定以上に進む
  • SBIハイパー預金が1兆円規模に拡大
  • 金利上昇が続き、利ざやが拡大
  • ROEが12%に上昇

基本シナリオ(確率60%)

  • 現状の成長率10%が継続
  • SBIグループのエコシステムが安定的に拡大
  • 金利は横ばい~緩やかな上昇
  • ROEは9-10%で推移

弱気シナリオ(確率20%)

  • 景気後退で貸倒れ増加
  • 金利が再び低下
  • SBIグループ全体が逆風
  • ROEが6-7%に低下

期待値加重平均

期待株価 = 2,550円 × 20% + 1,937円 × 60% + 1,419円 × 20% = 510円 + 1,162円 + 284円 = 1,956円

仮条件上限1,450円から: → +35%の上昇余地

ただし、これは3年後の理論株価です。IPO後すぐにこの水準に到達するわけではありません。


この企業における重要指標

IPO後、以下の指標を四半期ごとに追うことで、投資判断を更新できます。

貸出金残高の増減

なぜ重要か: 貸出金残高が増えれば、利息収入が自動的に増えます。逆に減少すれば、収益基盤が弱体化します。

見方

  • 前年同期比で+2%以上の成長を維持できているか
  • 不動産ノンリコースローンと法人向け貸出のバランス

預金残高の増減

なぜ重要か: 預金は銀行の「資金調達源」です。預金が増えれば、低コストで資金を集められます。

見方

  • SBIハイパー預金の残高推移(SBIグループとのシナジーの証)
  • 普通預金と定期預金の比率(普通預金が増えれば、資金コスト低減)

貸出・預金利ざや(NIM: Net Interest Margin)

なぜ重要か: 銀行の利益の源泉は「利ざや」です。貸出金利と預金金利の差が広がれば、利益が増えます。

見方

  • NIMが拡大傾向にあるか、縮小傾向にあるか
  • 金利環境の変化に応じてどう推移するか

不良債権比率

なぜ重要か: 不良債権が増えると、貸倒引当金を積み増す必要があり、利益が圧迫されます。

見方

  • 不良債権比率が1.5%以下に抑えられているか
  • 特に不動産ノンリコースローンの焦げ付きが増えていないか

ROE(自己資本利益率)

なぜ重要か: ROEが高い銀行は、株主資本を効率的に活用できています。ROEが低下すれば、株価も下がります。

見方

  • ROE 9%以上を維持できているか
  • 配当性向とのバランス(配当を増やしすぎると、ROE低下)

SBIグループとのシナジー指標

なぜ重要か: SBI新生銀行の最大の強みは、SBIグループのエコシステムです。このシナジーが弱まれば、競争優位性が失われます。

見方

  • SBIハイパー預金の残高推移
  • SBI証券との口座連携数
  • SBIグループ全体の顧客基盤推移

ロックアップ解除イベント

なぜ重要か: 180日後(2026年6月頃)にロックアップが解除されると、SBIホールディングスが追加売却する可能性があります。

見方

  • ロックアップ解除前後の株価動向
  • SBIホールディングスの売却意向(開示があれば)

関連用語集

  • 貸出金残高: 銀行が企業や個人に貸し出している金額の合計。
  • 預金残高: 銀行が顧客から預かっている金額の合計。
  • 利ざや(スプレッド): 貸出金利と預金金利の差。銀行の利益の源泉。
  • NIM(Net Interest Margin): 純金利マージン。貸出・預金利ざやを示す指標。
  • ノンリコースローン: 不動産のキャッシュフローのみを返済原資とする融資。
  • 公的資金: 国が銀行に資本注入した資金。SBI新生銀行は2025年7月に完済。
  • SBIハイパー預金: SBI証券の口座と連携し、証券担保ローン機能を持つ預金商品。

まとめ考察

SBI新生銀行IPOの本質

このIPOは、「かつて経営破綻した銀行が、公的資金+SBIグループの力で蘇生し、再び成長軌道に乗った」というストーリーです。

公的資金を完済し、2年連続で過去最高益を更新し、2026年3月期には1,000億円の純利益を見込む。この実績は本物です。

しかし、時価総額1.2兆円、吸収金額3,689億円という超大型案件であるがゆえに、需給面では初値が重くなりがちな案件です。

投資判断の分岐点

ポジティブ要素

  1. 金利上昇環境の恩恵(利ざや拡大)
  2. SBIグループのエコシステム(低コスト顧客獲得)
  3. 過去最高益更新中(実績ベースの成長)
  4. 公的資金完済(財務健全性の証明)
  5. プライム市場上場(機関投資家の買い期待)

ネガティブ要素

  1. 超大型案件による需給悪化(初値公募割れリスク)
  2. PER 13倍、PBR 1.46倍(メガバンクより高い=割高感)
  3. ロックアップ解除リスク(180日後に売り圧力)
  4. 景気後退リスク(不良債権増加懸念)
  5. 金利政策の不確実性(利ざや縮小リスク)

具体的な投資戦略案

短期トレーダー向け

  • 初値で即売りが無難
    • 大型案件は初値高騰しにくい
    • 公募割れリスクも視野に入れるべき

中期投資家向け(6ヶ月-1年)

  • 上場後1-3ヶ月様子見
    • 需給が落ち着くまで待つ
    • 1,300-1,400円まで下がれば買い場
    • ロックアップ解除前(2026年5月頃)に売却検討

長期投資家向け(3年以上)

  • 業績が証明されるまで待つ
    • 2026年3月期の通期1,000億円達成を確認
    • その後、1,200-1,300円で仕込む
    • 3年後に1,900-2,000円を目指す

「待ち」が賢明かもしれません

IPOは「祭り」です。多くの人が「初値で儲けたい」と飛びつきますが、大型案件ほど初値は低迷します。

SBI新生銀行のビジネスモデルは優秀です。しかし、需給面では重いことが想定されます

もちろん初値狙いもありですが、上場後に株価が落ち着いてから、じっくり検討するのもいいかなと思います。

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