「次に何が出るのか」がファンの期待を集め、その期待がさらにブランドを強くする——。
HUMAN MADEは、そうした“熱”の連鎖を事業の中心に据えているアパレルメーカーです。
この企業が利益を生む源泉
HUMAN MADEの利益の源泉は、単なるアパレル製造ではありません。
『希少性 × 世界観 × クリエイターの影響力』が互いに噛み合い、“常に売り切れる仕組み”を作っている点が中核にあります。
具体的には、
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①需給を意図的に絞る(供給量<需要)
→ 商品が希少化し、ブランド価値が落ちない。 -
②値引きを一切しない運営方針
→ 価格維持=利益率の安定化につながる。 -
③自社ECと直営店中心の販売
→ 中間マージンを最小化し、売れた分が利益に直結する。 -
④世界的クリエイターとの継続的コラボ
→ 広告費をほぼ使わず知名度を上げる構造を維持。
たとえるなら「限定プレミア商品を、常に適量だけ作り続ける工房」のようなモデルです。
在庫を持たない・値引かない・在庫ロスがないという三拍子が揃い、利益率の安定性を支えています。
業績にまつわる数値
以下は有価証券届出書に基づく、事実ベースの数字です。
■ 売上高:112億円(2025年1月期)
=アパレル単体企業としては一定規模に到達しており、海外比率64%と市場が広い。
■ プロパー消化率:100%
=「発売した商品が定価ですべて売れる」状態が継続。値引きロスがない構造。
■ 商品消化率:ほぼ100%
=在庫リスクを極小化しており、キャッシュ効率が極めて高い体質。
■ 経常利益:31.7億円(経常利益率28%)
=価格決定力と在庫管理能力が高いブランドに特徴的な高収益モデル。
■ インバウンド売上比率:37%
=グローバル需要を国内で取り込んでいる状況。
■ SNSプロモーション中心・広告費極小
(広告費はSNS動画制作・撮影費などが中心)
=広告費が利益率を圧迫しない構造が継続。
構造から見た企業像
● 外部構造(業界×顧客)
アパレルは供給過多の業界ですが、HUMAN MADEは「需要に合わせて供給量を絞る」逆張りモデルを採用しており、市場の構造がむしろ希少性の価値を押し上げています。
● 内部構造(ブランド設計×オペレーション)
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値引きしない販売方針
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SNS+著名クリエイターによる認知拡大
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自社EC主体で中間マージン最小
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仕入れ〜販売のオペレーション効率が高い
これらが連動し、「ブランド価値が下がらない限り利益率が落ちにくい」という因果構造を形成。
競合構造(同業 × 代替)
● 同業(同じ収益構造の企業群)
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大量生産・大量販売モデル
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トレンド高速回転モデル
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ラグジュアリーブランドの高価格モデル
HUMAN MADEはこのどれとも構造が異なり、「限定供給 × 世界観 × 高い定価維持」という独自の収益構造。
● 代替
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内製化(顧客が既存ブランドで代替)
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標準的アパレル+トレンド小物での代替
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セール中心ブランドによる低価格選択
● 条件による優位性
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ブランド希少性に価値を感じる層が増えればHUMAN MADEが選ばれやすい
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価格志向の強い市場環境では代替(低価格帯)が選ばれやすい
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供給数を増やしすぎた場合はブランド価値が毀損し、競合や代替に流れるリスク
IPO需給構造(浮動株・ロックアップ・OA)
※以下、訂正有価証券届出書(2025/11/10)に基づく
■ 公募:931,400株
■ 売出(主要株主):4,740,000株
■ OA:850,700株
合計:約6.52百万株がIPOで市場に出る見込み。
■ 上場時発行済株式数:22,911,400株
= 市場に出回る比率(浮動株比率)約28%
■ 大株主の状況(ロック対象)
(NIGOLD・Pharrell Williams・長尾智明氏などで合計 90%以上保有)
= 不動株が非常に厚く、短期的な需給は軽くなりやすい構造。
ただし売出し株数が大きいため、短期的には「需給バランス:中立〜やや重め」の側面もある。
■ ロックアップ
一般的なロックアップ(90日・180日)が中心。
= 解除時期に売却可能イベントが集中しやすい構造。
■ OA発動条件
株価が強ければ追加売出しが入るため、需給の軽さは緩和される。
仮条件レンジ分析(公開価格決定前)
■ 仮条件:3,000〜3,130円
■ EPS(2025/1期):96.80円(株式分割後ベース)
● PER
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下限:3,000 ÷ 96.80 ≒ 31倍
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上限:3,130 ÷ 96.80 ≒ 32倍
※同業IPOの平均PER(小売・ブランド系):20〜40倍 → レンジは平均〜やや高めの水準
● 公募+売出+OAの吸収金額
= 約(株数6.52百万株 × 仮条件レンジ)
→ 約196〜204億円規模
※上場時の時価総額:約3,000円 × 22.9百万株 ≒ 687億円
→ 市場吸収率 ≒ 約29%(やや大きい)
● 主幹事スタンス
仮条件は想定価格比 +1〜+2% 前後
→ 中立〜若干強気寄り
● 初値需給の条件整理
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浮動株は厚くない → 軽い
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ただし売出し株が大きい → 重い
→ 短期需給は「軽さと重さが混在」する構造
PERから計算した株価レンジ
※これは「予想」ではなく 条件成立時の数値レンジ です。
例:公開価格3,100円の場合
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PER=約32倍
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EPS成長率
10%成長なら EPS約106円 → 3,100円はPER約29倍
20%成長なら EPS約116円 → 3,100円はPER約26倍
→ 成長率とPER帯の組み合わせで評価が変わる構造。
この企業の重要指標
■ プロパー消化率
= ブランド価値が落ちていないかの直接指標。
■ 在庫回転率
= 限定供給モデルの健全性を判断する基礎KPI。
■ クリエイター契約の更新状況
= ブランド世界観の源泉が変化する可能性。
■ 海外売上(中国・韓国・欧米)の伸び
= グローバル展開が中期計画の核心。
■ ロックアップ解除タイミング
= 株主構成が動き出すイベント。
用語集
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プロパー消化率:定価で売れた割合
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OA(オーバーアロットメント):需給調整の追加売出
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浮動株:市場で自由に売買される株
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ロックアップ:一定期間売却を禁止する制度



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